まだこの先書くかどうかもわからない小説のサワリだけをそっと書いて反応を見ようなんて小賢しい事をしているようじゃ、どこかの掲示板で「どうやったら売れるラノベ書けますか?」と聞いている輩と変わらないということくらい百も承知さ。読んでもらえるだけでもありがたいのに感想やお金を欲したらきりがないだろ?と言ってみるテストなんだが、ちなみにタイトルは『ファンタムギア』(仮称)です。

雨に煙る山道を、一台の車が走っていた。
通称カーゴと言われる中型トラックの荷台では、重そうな鉄の塊がわだちの起伏に従って不安定に左右に揺れ、そのたびに荷台を軋ませていた。ステアリングを握るのは銀髪のショートボブに前髪を眉の上で切りそろえた年のころ12・3歳の小さな運転手。背筋を伸ばして漸く見渡せるフロントウインドウから、注意深く前の景色を見てステアリングをさばくが、その表情が険しいのは雨や山道のせいだけでは無かった。
「まったくもう、あの変態オヤジのせいですっかり遅くなってしまったじゃないですか! おまけに予定の荷物は買えないし、帰り道は直前で川が増水して通れないし……」
一人ごちてから腕時計を見て、ルームミラーで荷台に積まれた荷物を確認する。そして遅くなってしまった原因となるやり取りを不意に思い出すと、「あ”ーーーむっかつくぅ」とカーゴのキャビンで叫びながら片手でおもむろに髪をグシャグシャと掻き毟り、その怒りをぶつけるように今度はクラクションを何度も鳴らした。
普段あまり車の通らないこの抜け道は幅が狭く、運転しているカーゴだけで道幅いっぱいになるくらいだった。そのためブラインドコナーでは常に速度を落とし、長めに警笛を鳴らしてから曲がるのだが、今日はコーナーを抜けた短い直線路でも頻繁にカーゴのクラクションは鳴らされていた。
普段なら眠気を誘うワイパーのタックンタックンという間の抜けた音も、流石に今日は子守唄とはならず、運転手は時折思い出しては眉を吊り上げ、但し、慎重に雨の狭い山道を登り続けた。
「なに?」
山道も頂上まであとわずかという処で、運転手が何かを感じてルームミラーを見た。そこには曲がりくねった山道を一つのライトが迫っていた。恐らくはトライドと呼ばれる二輪車だと思われるそのライトは、カーブのたびに姿を現しては消えを繰り返していたが、その距離がみるみるうちに詰まっているのは明白だった。しかも、先頭のライトを追うように暫く後方に10個ちかくのライトがこれに続いている事も見て取れた。
「まったく、雨の日にツーリング? しかもこんな山道を? これだからセンセイを始めトライド乗りって理解できないのよね……」
ミラーを見ながら運転手が呟いているうちに先頭のトライドがカーゴの背後に追いついて盛んにパッシングを浴びせ始める。
「ちょっと、何考えてるのよ! 見て分かんないかな? 道幅いっぱいでしょ!?」
運転手が顔をしかめながらルームミラーに向かって吐き捨てる。随分後ろに居たと思っていた後方のライトの群れもだいぶ近くに来たようだった。恐らくは、この雨の山道で競争でもしているのだろう。
そんな事を思っているうちに、カーゴの背後にピタリと付いた先頭のトライドが、パッシングと同時に警笛を鳴らし始めた。
「まったく……そんなに行きたきゃいきなさいよ。っていうか、抜けるなら抜いていきなさいよね!」
運転手がこれ見よがしにゆっくりとアクセルを踏む力を抜いた時だった。
後方で見え隠れする集団の方で小さな光がいくつか明滅した後、何かがカーゴの後方に当たった。
それは、跳ね石のようにボディを鋭く叩く音だった。
「え?」
運転手がルームミラーを見ると再び後方で光が明滅し、今度は右のミラーがはじけ飛んだ。
「な、な、な、なんなのですよっ!」
運転手は反射的に頭を低くすると同時にフロアを踏みぬかんとする勢いでアクセルを踏む。カーゴは雨にぬかるんだ泥道でまるで突然ムチを入れられた競走馬のように、タイヤを空転させてから、スピードを上げた。
「ち、ちょ、ちょっと、ま、ま、ま、わ、わわわわ!」
それまで慎重に抜けていたカーブに向かって全力で走って直前でフルブレーキング。ビンッと何かが爆ぜる音がして積み荷が運転席の背中に激しく激突した。引き攣った顔のままステアリングを左に切り一気にアクセルを踏みぬくと、荷台の荷物が右に滑りカーゴの後輪部が右にステップして右リアタイヤが空転する。
運転手は感覚的に車の右リアタイヤが崖の外にあると感じたが、そんな事は構っちゃいられない。おまけにこんな状態で対向車が来たら、一巻の終わりだろうけど、ここでアクセルを戻したら……恐らくはそれ以上の確率で自分の世界が終わってしまうであろう匂いの方が、プンプンと鼻をつく。
ちらとミラーを見ると、最初に追いついたトライドが少しだけカーゴから離れ、丁度見えていた後ろの集団に向かって振り向きざま発砲した所だった。
集団では一つのライトが宙を舞い、そのライトの巻き添えを食らうようにもう一つのライトと共に谷へ落ちていった。
その光景に運転手が目を見開くと、声にならない声をあげる。
「ひ……ひぃ……ぃぃぃぃっぃぃぃぃぃぃ」
思わずアクセルにかける力を緩めた途端運転手の背後で大きな破裂音がし、慌てて再びアクセルを踏みぬいていくつかのカーブを曲がったところで、突然カーゴのエンジン音が一気に高くなった。
同時に運転席からは一面灰色の空だけが見えて、運転手の体はまるでブランコから投げ出された時のような浮遊感を感じた。
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

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