見やすいグラトラのメーターは、対価に見合うか?

今回は、先日書いたグラトラ(スズキ・グラストラッカー250)のメーター交換記事の続編にして、現代日本の深層に蔓延る慢性的デフレとその脱却について語ってみたいと思う。

さて、まずはグラトラ。

前回は、メーターだけを取り付けたところでタイムアップ(というか、暑さでギブ)だった。
今回は、まず配線から行う事とする。
ちなみに、前回書いたようにメーターの表示機能のうち
・ガソリンメータ
・シフトインジケータ
・アクセサリライトインジケータ
に関してはグラトラに設定がないため今回は未使用にしようと思う。
(※シフトインジケータはスピードと回転数から使用ギアを判断できると思うので、後々気が向いたらAruduinoかなんかで作ってみようかなと思ってはいる。)

よって、配線は
・ウインカ左右(元々のウインカインジケータ配線は殺して、左右ウインカよりホットを分岐使用した)
・ハイビーム(元々のハイビーム配線を使用)
・ニュートラル(元々のニュートラル配線を使用)
・タコメータ(コイルより分岐)
・バッテリチェッカ(ヒューズを噛ましてバッテリへ直結)
・メータ電源(元々のメータ照明配線を使用)
として、未使用の配線に関しては個別に絶縁処理をした。

一応この段階でチェックをして、タコメータ本体と各インジケータが正確に動作することを確認した。

さて次は、スピードメータの処理である。
元々グラトラのスピードメータは、フロントフォークのハブから回転数を取り出す機械式だ。ここから伸びたワイヤがスピードメータまで伸びていき、メータ内の磁石とヒゲゼンマイを使って針を動かすアナログチックなものだ。

対して新規メータは、マグネットをホイールなどに取り付け、その動きをセンサによって感知し速度を割り出す電気式(センサ式)だ。この方法のメリットは、マグネットやセンサの取り付け位置や方法の自由度が機械式より高く汎用性に富んでいることと、最近のメータで主流になりつつあるステッピングモータによって針を動かす方法で利用しやすい等の点が挙げられる。

まぁ、元々これらセンサや強力な永久磁石、また、ステッピングモータ等が劇的に安くなり、結果として電気式メータとしてのパッケージが安くなったという事により普及してきたという事もあるだろうが、これに関しては後述する事とし、話を先に進める。

これがセンサユニット。
ボルトのように見える先端部(コードが出ている反対側)にセンサが付いていて、この前をマグネットが通過すると1カウントする。ホイールに付いたマグネットが、指定時間内に何回カウントするかわかれば、ホイールの回転速度=車速がわかるという仕組みだ。

今回のグラトラに関していえば、機械式メータを選べばポン付けできたのだろうけど、電気式を選んだ以上センサの取り付けをしなければいけない。センサ自体を足回りに持っていき、だいたいの取り付け位置を決めたところでセンサ取り付け用のステーを作る、
上の写真はいつもの方眼紙でステーの大きさと位置・形状を決めている所。

おおまかなステーの形とセンサの位置決め。
今回のメータには直径8mm位のネオジム(っぽい?)マグネットが3つ付属していた。マグネットはメータの設定モードで2~12個まで設定できるらしい。通常、センサとマグネットの位置は直上から磁力の届く範囲(センサの半分くらい?)、間隔は1~数ミリ位であればカウントしてくれる。その範囲でマグネットを付けられる所を探していたら、ブレーキディスク固定用のボルトの頭が丁度いい事を発見した。センサ用ステーの位置はソコを基準にして設計してある。

写真中央の黒っぽく出っ張っているのがマグネット。センターにマジックでポッチがつけてあるのは表裏を間違えないようにするため。当然だけどセンサとマグネットには極性があるので反対向きに付けるとセンサが反応しない。同型のメータの評価欄に「電源は入るけど動作しない」なんて書いてあるのはマグネットの表裏が逆の可能性が大きい。

ちなみにマグネットはこのような鉄の部材にくっついてくれるけど、瞬間接着剤等で接着する事をお勧めする。今回は、いつも使ってるセメダイン社のスーパーXを使った。理由は、シリコン系なので耐衝撃性に優れている点と、万が一このボルトを外す場合シリコン系の接着剤の方が掻き出しやすいと判断したため。但し、きちんと固まるまで遠心力によるスラスト方向への剥離が心配だったので、繊維入りのアルミテープで補強してある。(これはこのまま使用している)

今回、付属しているマグネットが3つで、ディスク取付ボルトが6本だったので、ボルトの穴3か所にマグネットを取り付けた。当然センシングにはデータ(マグネット)の数が多い方が良いだろうが(内蔵チップの処理能力は考えないとして)あえて3つ以上に増やす必要はないだろうと判断した。実際使用してみても不具合は全く感じられないので、同じユニットを使う人はご参考までに。

うーん、斜めに覗いて型紙を作っていたので位置がずれていたようだ。
但し、ディスクを動かすと下のマグネットがセンサの2/3位をカバーする位置に来ているので動作には問題なかった。(実際の使用上、マグネットとセンサの位置関係に問題は見られていない)
隙間に関しては2mm程取ってあるが、こちらは調整が可能。

ステーの余分な部分を落とし、唐突なオブジェクトにならないようにRを付け、つや消し黒に塗装して装着した。

センサのコードはタイラップで固定。
ちょっと見ただけじゃわらない?

全てのセンサや配線の取り付けが終わったら、メータ側の設定を行う。
特にスピードセンサの設定はタイヤ外周とマグネットの数を設定しないといけない。タイヤ外周は理論値を計算で出してもいいけど、銘柄によって差があるから実測の方がいいと思う。
今回は実際にタイヤの半径を計り(地面接地部からアクスルシャフトの中心の計測で出ますね)円周を出した。

設定後、実際にGPSを利用した速度計(今回はバイク用ナビを使用したが、スマホで十分)を使って誤差の確認。ジブンとしては結構ハッピー寄り(実際よりも速い速度表示)にしたかったんだけど、メーターで時速50km時に実測(GPS)で49kmという結構タイトな設定になっていた。
折を見てハッピー寄りにしたいと思っているのだが、結局そのまま使っているというのが現状である。

さて、今回のメータ交換だが、結果としては大満足である。
タコメータはあくまでお飾りのつもりだったが、あればあったで結構見ているようだ。また、一部Netで液晶が見づらいような表記があるが、ジブンは感じない。むしろ、昼は黒バックに白抜き文字が映えて見やすいし、夜は青バックに同じく白抜きの文字がとても綺麗で気に入っている。(バックの色は外光で青~黒に見える)文字が見づらい方は、メータ自体の取り付け角度が寝過ぎているのかもしれない。確かにそうなると、液晶というよりもメータのガラス面が光って見づらいからだ。ジブンも色々試してみたが、少し立ち気味の方が良いように思われる。

また、インジケータ類も非常に見やすくなった。特にニュートラルランプ(N)はノーマルに比べて格段に見やすくなったし、ウインカもノーマルでは左右共通のインジケータに対してメータ内で左右それぞれが点滅するので大変見やすい。インジケータが見やすいというのは安全運転の見地からも重要である。

なお、今回の命題であるトリップメータも問題ない。但し、トリップはトリップモードにしておいても一度イグニッションをOFFにすると、次回起動時には自動的にODO(積算計)モードに変わってしまう。これに関しては予めNetで調べて織り込み済みだったし、必要ならボタン一つで変えられるので、現時点ではさほど気にしていない。ODO、TRIPとも文字が小さいのは玉に瑕だが、そこまで求めるのは酷だろう。元々無かった機能なので、ついただけでガソリン残量の推測には大変助かるし、なによりあまりにも充実し過ぎたら、高いメータが売れなくなってしまうから。(笑)

と、まぁここまで割と固い感じで書いてきたんだけど、実はここからが本題だったりする。

このメータ、つけるのは正解か、否か。

誤解を避けるため予め書いておくが、今回自分で自分のバイクに取り付けたことに関しては大満足している。上記の命題は、誰かがこのメータを買って、自分で取り付ける或いは取り付けてもらう場合の話だ。ちょっとややこしいが双方には大きな違いがある。

みなさんはお店などでアクセサリを取り付けてもらったり改造をお願いしたり、或いはメンテナンスをお願いしたりするときに「工賃高いなぁ」と思った事はないだろうか?
特にNetで見つけて安く買ったアクセサリなんかの取り付けだと尚更だ。
まぁ思う事は勝手なのだが、実際に口にしたことはないだろうか? それも複数回。或いは毎回。

そこでちょっと簡単な計算をしよう、例えば取り付ける側のお店の立ち位置から。
メカニック兼営業の個人商店があったとしよう。店は住居と店を兼ねる形で家族は無しだ。仮にこの店主の給料を10万円/1か月だとする。条件によって異なるけど、一般の会社ではだいたい手取りの3倍は売上が無いと給料は払えないというが、ここではあえて2.5倍にしておこう。
(根拠だとか云々を細かく言いたい場合は各自で条件を精査してシミュレーションしてもらいたい。ここでは個々の条件に対応した根拠はあえて示さないでおく)
10万円の手取りが欲しい場合は25万円必要なことになる。
1か月の勤務日数を単純に25日(1週間に約1回強の休みがあると仮定)とすると、1日に1万円の収入が必要だ。8時間労働だとして時給にすると1,250円。

例えば今回のメーター取り付けに関して、メーター持ち込みで取り付けたとしよう。
作業手順としては、まずメーターの検証をざっとして、バイクの検証をざっとして、バイクをある程度バラし、どうやって取り付けるかアタリをつけて、ステーを考案し実際に切った張った塗ったをしたとすると……8時間では難しいかも?
まぁでもここはあえてその道のプロという事で、知識と時短できる工具とある程度のブースがそろっているとして8時間でできるとしよう。すると、このメーター取り付けに際し、店主が欲する工賃は10,000円になる…………訳じゃない。

実際には10万円/月では生活できないだろう、では倍の20万円にしよう。
そうなると単純に依頼者の支払額は20,000円だ。
しかも実際には、部材や工具の調達費、スペースだけじゃなくて運搬車両の支払いなども考えると1日で稼がなくてはいけない単価は更に嵩むことも考えられる。つまり、請求額は更に上がる可能性がある。

ここで元の話に戻ろう。
例えば今回のようなメータ、4,000円位で買ったメーターに20,000円の工賃と聞いたら、どう思うだろうか?
もちろん「そんなの全然高くない!」と言ってもらえれば幸いだけど、経験上それはマレで、だいたいが
「えー、高いよ! 折角安いのさがしてきたのに、工賃が何倍もするってどーなのよ!」
って反応が多い。特に、中華製など安く入手したものであればあるほど。
(じつはそういうものほど、挙動が安定していなかったり、造りが雑だったりして取り付けには時間と労力が必要になるってのは少し考えればわかるはずなんだけどね)

まぁ、お店によっては丸々請求しない場合も多々あると思う。
特に常連さんなんかだと「また次の機会にお金を落としてもらえれば……」なんて思って安くしたり「暇な季節だから収入がないよりはマシ」なんて事情もあるだろう。
はたまたそれとは全く逆で「ウチの社員は研修なんかで多額の費用をかけて育てているのだから6万円は貰わないと困る」なんてのもあるだろう。
(勿論、あくまで売買や役務に対する契約なので、事前に全く何の断りもなく高額な請求を行う場合は問題外だ)

近年の抜け出せないデフレ。
やっぱりこういう所が巡り巡っているんじゃないかと思う。但しこれは、一概に工賃に対して文句を言うなという訳ではなく、ちょっと冷静になって適正価格を考えてみることも必要だと思うという事。そのうえで、交渉があるのは悪い事じゃないし、自分の想像と違っていたら頼むのは止めればいい。
ただ単純に「1,000円のアクセサリー付けるのに工賃5,000円とかありえねー」とか、相対的な感覚で判断するのはいかがなものかと思っている。
(ちなみに、そのままの実例がある(あった)訳ではない。あくまで『例え』である)

そうそう、工賃的にはメーカー・ディーラー系(一番工賃が体系化されているから)だと1FR(フラットレート:1時間を12で割った時間工賃。つまり、5分の単価賃金でだいたい作業によってメーカーから『この作業は○FR』っていう指標がある)1,000円前後なんじゃないかと思う。つまり、5分で1,000円、1時間で12,000円。

さて、ではこの計算式でこのメーターを取り付けたら……流石に満額請求は難しいだろう。
まぁただ、ジブンでやるなら好きでやってる作業なので、そんなのプライスレス! と考えることもできるし、或いは自分でやることで工賃分96,000円得をした! と更にお得な気分に浸れる……かどうかは別だが(笑)
でも、こんな事が頭の片隅に有るのと無いのでは、自分でやる時も作業をお願いする時もちょっとだけ違うと思うのだ。

労務費って、大きいのよ。(笑)

ということで、まかり間違って私に仕事を依頼の場合は、覚悟のうえで……(爆)

 

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