A Rainy Day 〜Episode 16.5〜
(ver.2)
Written by Safety
ある日の夕暮れ時。
その日は午後から雨が降り出していた。
雨空の下、一つの傘に寄り添うようにして歩く蒼髪の少女と黒髪の少年。
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「キキィ〜」
リニアが駅に着いた。ドアが開く。
手をかざすシンジ。
「あれ?雨が降ってる。さっきまであんなに晴れていたのに。」
「そうね。」
言葉を交わした2人は改札口に向けて歩き出す。
駅の出口まで来た2人。
シンジはバックから折りたたみ傘を出した。
一方そのまま外に向かって歩き出そうするレイ。
それを見たシンジがあわててレイを呼び止める。
「綾波、待ってよ!!」
「なに、碇君。」
「綾波、傘は?」
「持ってないわ。」
「だからって家まで濡れて帰る気?」
「ええ。」
「そんなのダメだよ。風邪ひいちゃうよ。」
「別に構わないわ。」
「構うとか、構わないとかの問題じゃなくて…、綾波が風邪をひいたら困るじゃないか。」
「誰が困るというの?」
「え!?、だ、誰って、ほ、ほら例えば、父さんとか…、…リツコさんとか……。」
うろたえるシンジ。
「………そう。…別にあなたを困らせるわけではないわ。」
こころもち語気を強めるレイ。
(え?、綾波…、ひょっとして怒ってるの…?、…僕何かマズイこと言ったかな?…)
「と、とにかく、綾波が濡れて帰るのを黙って見過ごすわけにはいかないよ。」
そう言って、シンジはレイの方へ傘を向けた。
それを見てポカンとするレイ。
「………入りなよ、…綾波。」
シンジが顔を真っ赤にして言った。
シンジの意図を悟り、レイも頬を赤く染める。
「あ、ありがと…。」
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歩き出して5分間、まったく会話のない2人。
しかし、シンジはこの状態を息苦しいものとは感じず、むしろ満ち足りた気分だった。
一方レイは、シンジにこの間から言おう言おうとしていたことを、口にするべく努力
していた。そして………。
「……ゴメンなさい…、碇君…。」
レイは思いつめた表情でシンジの顔を見つめる。
その表情にドキッとしたシンジだったが、あわてて言葉を返す。
「えっ…、…なぜ…謝るの…、綾波…。」
レイは正面を向き直り、ゆっくりと言葉をつむぎだす。
「……私……、…碇君…、…あなたのことを……、…守れなかった………。碇君が…
ディラックの海に飲み込まれた時……、……私…あなたを…助けられなかった……。」
「なんだそんなことなの、気にしないでよ綾波。あれは僕が悪かったんだから。」
シンジは笑いながら言った。しかし…、
「違うの!!!」
叫ぶレイ。シンジはびっくりして手に持っていた傘を落としてしまった。
「違うの…碇君…。…私は…あなたを守ると…約束したの…。………でも、……でも…
…私はあなたを……あなたのことを……守れなかった…。……私は……私は……、」
こぶしを握りしめ身を震わせるレイ。
「………こんな自分が……、………許せない……。」
降り続く雨は容赦なく2人を濡らし続ける。
シンジは今まで見たことのないレイの表情に驚きを感じていた。そして同時に
そんなレイを、シンジはたまらなく健気に感じた。
そして、レイの背中に手をまわし、ゆっくりと自分にひきつける。
「…ぅん…。」
抱きしめられたことで思わず声が漏れるレイ。
「…それは違うよ…、綾波…」
レイの耳もとでゆっくりとつぶやくシンジ。
「…あれは綾波のせいなんかじゃない…。…綾波が気にすることなんてこれっぽちも
ないよ。…確かに、綾波は僕のことを守ると約束してくれた…。すごく嬉しかったよ。
でもね、綾波…、…全てを守ることなんて、無理に決まっているんだ。」
シンジはレイの身体をそっと離し、その両肩に手を置いた。
そしてレイの瞳を見つめる。
「………大切なのは、…自分のできる範囲で努力することなんじゃないかな。そして、
誰かが助けを求めている時に、その時にこそ、最大限の努力をする、それでダメなら
仕方がないと僕は思うよ。」
「…でも…。」
「気にしないで、綾波。……それに、もし綾波までディラックの海に飲み込まれたら、
それこそ大変じゃないか。…僕にとってはその方がよっぽどつらいよ。」
「…なぜ?」
レイの疑問に対し、シンジは「シマッタ」という表情を浮かべる。
そして顔を真っ赤にしながら、なんとか言葉をつむぎだす。
「………な、なぜって…、…そ、それは……、………ぼ、僕にとって……綾波は………
……そ、その、………大切な……人……だから…だ…よ……。」
それを聞いて、レイは耳たぶまで真っ赤にしてうつむいてしまった。
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気がつくと、2人ともずぶ濡れになっていた。
「これじゃ風邪ひいちゃうね。」
「…そうね。」
「バス停まであとちょっとだし、行こうか。」
「……ええ。」
シンジは落とした傘を拾い上げた。
「さ…、入って綾波。」
それを聞いたレイは一瞬頬を赤く染め、そしてうつむいて傘に入った。
歩き出した2人。しかし、レイは何も言わず、ずっと下を向いたままである。
「…綾波、どうしたの?」
無言のレイを不思議に思い声をかけるシンジ。
シンジの問いに、ビクッと肩を震わせ、ゆっくりと顔を上げるレイ。
その顔は真っ赤である。そして…、
「えっっ!?」
突然レイがシンジの腕をとり、そしてシンジに自分の身体を密着させる。
「あ、綾波…!」
あわてるシンジ。
レイは、小さな、とても小さな声でシンジに懇願する。
「…バス停まで…。」
「…えっ…。」
「……お願い…、…バス停まで……このままで…いさせて…。」
そして2人は歩き始める。
シンジは自分の腕からつたわるレイの温もりを感じると同時に、レイが折れそうな
ほど華奢な身体であることを改めて認識していた。
(綾波……、こんなに細い身体で……僕を守ろうとしてる。……そんな綾波に……
…僕は…どう応えればいいんだろう……?。……僕は…どうすれば…いいんだろう
……?。……僕は……どうすれば………。)
いつしか歩みを止めるシンジ。
レイはシンジが歩みを止めてしまったのをいぶかしく思い、両腕でシンジの腕にしがみ
ついた状態のまま、おずおすと顔を上げシンジの様子をうかがう。
そしてその視線の先には、レイを見つめる二つの黒い瞳があった。
いきなり目と目が合ってしまい、赤面するレイ。あわてて目を背ける。
その瞬間………、
「…!!!」
レイはシンジに包まれていた。
シンジがレイのしがみついている方の腕を自分の方へ強く引き寄せたのである。
自然にレイはシンジの胸に飛び込む格好となっていた。
そしてシンジはもう一方の腕でその蒼髪をやさしく撫でる。
その初めての感覚にうっとりしてしまい、されるがままのレイ。
雨の中、重なった2人のシルエットが浮かび上がる。
……そして数分後………。
「…ねえ…、綾波…。」
「……何…、…碇…君…。」
シンジは息を大きく吸い込み、そして心に誓った言葉をゆっくりとつむぎだす。
「…………これからは……僕も……、………綾波を……君のことを…守るよ。」
「……えっ……。」
レイは少し身体を起こした。そして見つめあう2人。
「…だって、綾波に守られるだけじゃ、男として格好悪いもんね。」
にっこり微笑むシンジ。
レイもそれにつられて微笑む。
(………嬉しい……。…………でも……、……それだけの…理由なの…?)
シンジに聞きたかったレイだったが、なぜか聞くことがためらわれた。
しかし、続けてシンジはレイの耳元で囁く。
それを聞いてボンと真っ赤になるレイ。
それは、レイが期待したとおりの言葉だった。
「…それに、…綾波は僕にとって、特別な存在だからね。」
そしてシンジに聞かれないように、小さな声で嬉しそうにつぶやく。
「…なにを…言うのよ…。」
《完》
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