HIRANO VALMOBILE (最終回)

長い事色々な方に見ていただいたAMi-worksのバルモビルコンテンツですが
このたび車両を売却する運びとなり、これが最終回となると思われます。

売却にあたり、長らく室内放置していたバルを引っ張り出したところ、色々と不具合が出たり致しましたので、今回はそのあたりの対処も含めた薀蓄を公開したいと思います。

まずはこの画像。
先日、当AMiLOGのトピックで公開した振動で折れたプラグです。

このプラグの型番はB-6となっています。
NGKに聞いた所、この品番は製廃だそうですが、代替でB-6Sというものが使えると教えていただきました。
ところが、B-6Sってなかなか置いてないんですよ。そこで見つけたのが同じNGKのBM-6というプラグ。
どうも芝刈り機なんかに使われているようで、プラグの突出しや径は一緒なんですがハイトが妙に低いんですよ。試しに取り付けてみたら、上記写真の折れてしまったプラグの高さより低い位でして、もしかしたらこの位置だとホットの電極(いわゆる現代のハイテンションコードの先、プラグキャップにつながる部分)があまりにも周辺の空冷フィンに近すぎて、接触若しくはリークが起こりそうな感じです。
でもまぁ、問題は高さだけなのでこれはゲタを履かせて回避する事にしました。

はい、ボルトを使ってこんな感じのゲタを造りました。
これで今後入手しやすいBM型プラグを使う事が出来ます。

でも、ちょっと見栄えが悪いですし、延びた電極部からリークしたら嫌なんで……

余っていた燃料ホースでシールドしてみました。

ほら、これなら見た目も機能も十分になりました。

 

さて次に、これは以前から懸案事項だった燃料コックの問題です。

バルのコックに使われているガスケットはOリングや平板ではなく、円錐状のコルク材です。確かメグロとか陸王なんかも同じだと聞いた覚えがあります。

HIRADEというメーカーのロゴが書いてあります。
ガスケットの自作も可能ですが、今回は時間の都合でパス。
そこで液体ガスケットを塗りまくってみましたが、やはり可動させるとガソリンが滲んでしまいます。

コック部を抜いてタップを切り、コックの代わりにボルトで塞いでキャブまでの経路に代替コックを付ける案も考えましたが、なによりガスケットはやろうと思えば作れるはずですし、貴重なバルの資産を破壊するのは嫌だったので……

今回、コックはリザーブの位置で固定し、漏洩部には液体ガスケットを流し込んで常時キャブに燃料が流れる仕様としました。

一応、コックを燃料タンクにつけた状態でテストしたところ、この状態ならコックから漏れることがない事を確認しましたが、なにせ液体ガスケットですから、次期オーナーは早目に修理・補修することをおすすめします。
また、液体ガスケットで固定してあるだけですので、コックを捻ると漏れます。
但しこれは、液体ガスケットなら補修の際に真鍮ブラシやリムーバーを使えば固化した液体ガスケットを簡単に除去できるという観点に立ってのものですので……。
基本的に、これを街乗りの足にしたり遠出をする猛者は現代にはいないと思いますので(過去に友人の御尊父が足にしていたらしいです)当面はこれでも大丈夫かと思います。

補足ですが、バルのガソリンタンクは現代の複雑怪奇な形状のタンクと違って長方形で、しかもコックの位置(取出し口)は長方形の一番端にあり、更にどの辺よりも取出し口が低くなっているため、イベントなどで走らせた後にタンクを外して中のガソリンをほぼ完全に抜くことが可能です。
(タンクを取り付ける2本のM10ビスに付くナットを蝶ナットなどにし、イベントなどでの走行後にはフエルホースをピンやバイス等で挟んでタンクを外してガソリンを抜けば、ほぼ完全にタンクを空にできます。)
そういった意味からも、まぁ、必要ならば中間コックを付け足すか、或いは早目にコック自体の補修をするという事で当面は大丈夫なんじゃないかと思った次第です。

 

さて、つぎの問題点は……出品前に動かしたらサスペンションがヌケ(切れ)ました。
これは仕方ないというか……ある意味バルのサスペンション機構による不具合ですね。

バルのサスペンションはリアについているゴムの伸張で担っています。
まぁ、輪ゴムの親玉ですね。

これが現物です。
外側で切れているのはアッテネータとでもいいましょうか? これ以上ゴムが伸びると下突きするよ!という際に伸び側を制御する革のベルトです。(革でってのが凄いですよね:笑)
問題は内側のゴムなんですが、これは唯一切れずに残った外側のゴムです。
(切れそうなので切れないうちにサンプルとして外しました)
実際にはこの内側に同じ幅、厚みの一回り小さいゴムベルトが入り、二重になります。
そしてそのセットが左右に付く感じです。

つまり
ゴムベルト(小)・ゴムベルト(大)・革ベルト
ゴムベルト(小)・ゴムベルト(大)・革ベルト
と言う風になるわけですね。(下の写真を見たらわかるかな?)

お金と時間を掛ければこのベルトを探すことは可能だと思いますが、家から行ける範囲のホームセンターなどには(案の定)使えそうな素材がなく、仕方なくバイクのチューブを輪切りにしてつけてみました。

一応、サスペンションとしての効果は発揮していますが、体重の重い方だと底突きしてしまうと思います。

どのみちゴムですと今後も切れる可能性があるので、オリジナルにこだわらないならばスプリング(バイクのスタンドのスプリングなんかが使えそうかな?)に交換した方が良いと思われます。また、当面の底突き対策としては、縮んだ状態で紐などを使って縛ってしまえば良いと思います。
お尻が痛くなるほどのロングにはバルで行かないでしょうから。(笑)

大きな構造に関する不具合の対策については、こんな感じでしょうか。

■ 車両のオリジナル度について

手元に来たときはグサグサのボロボロでしたが、幸か不幸かそれで前オーナーが嫌になったようで(笑)あまり弄られず、また欠品も少ない状態で手元に来ました。シート、フレーム、タイヤ、側板、エンジン、キャブなどは塗装も含め当時のままです。
可動部の洗浄やグリスアップ、オイル汚れなどの除去、電気系の配線の一部補修と鍵の作成、細かい欠品ネジや劣化した革布ゴムを使った部分の再生或いは代替え品の作成は行いました。
全般に見えるオレンジ色の部分の塗装やシートは当時のままという事になります。特に側板は凹みなどあるものの、自分がネットなどで見た当時もののバルの中では綺麗な方だと思われます。何より後のTIPSビデオで紹介しますが、オリジナル塗装時の平野製作所のロゴまで消えずに残っている事が大きなポイントだと思います。(強く拭いたりすると消えてしまうのです)

残念ながらハンドルを含めたメッキ部がグサグサに錆びており、この部分はメッキと錆を除去しました。また、当時(も)お金を掛けずにレストアしたかったので、これらの部品はメッキに出さず、金属地を出した後クリアのPOR-15を筆塗りしてみました。

あれから三年程、屋内保管していたのですが……

PORが紫外線による(?)劣化のため、飴色(贔屓目に言うとシャンパンゴールド:笑)になり、内部には薄らと錆が出ています。しかし、ジブンとしてはこれは奇跡的なラッキーな現象だと思っています。

車両全体が当時のオリジナル塗装でヤレた感じなので、この方が味わい深い感じになっています。おそらく再メッキしていたら、いまでもその部分だけ妙にキラキラとしていて、車体のヤレが味ではなくボロに見えていたのではないでしょうか?
まぁ、かなり贔屓目な見方ではありますが、三年寝かして熟成されて良い感じになったと思っています。

結構オリジナル度が高く、きちんと『走る』バルは少ないと思います。

工具袋の紐は朽ちていたので変えましたが(元色も黄色でした)工具も2点残っていました。
工具にPOPと入っているのは、全盛期のHIRANOの主力スクーターだった「ヒラノ・ポップ・マンリー」に元々搭載されていたものだったからでしょう。
たった2点しか入っていませんでしたが、これだけでもかなり貴重だと思います。

以上が、9月1日オークション出品時のバルの状態です。
もちろん製造から半世紀近く経っているバイクですから、決してノーメンテでガンガン走れるモノではありません。しかし、この程度のレストアでここまで走るバルもそう多くはないと自負しています。
今回こちらに載せたコンテンツの他に、過去のコンテンツも見ていただければこの個体の経緯や仕様がわかると思います。また、ご質問等ありましたらお気軽にどうぞ。わかる範囲でお答えします。但し、売買に関する質問はオークションサイトにてお願いします。

最後に、バルの『収納から組立』『エンジンスタートとライト点灯・ブザー(クラクション)鳴動』『TIPS』の動画を掲載して、私によるバルモビルコンテンツは終了となります。

バルを通して知り合えた皆様や学んだ事など、この場をお借りして御礼を申し上げます。
ありがとうございました。

 

バルモビルの収納から組み立てまで

バルモビルのエンジン始動

バルモビルTIPS

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