THORENS 蓄音機 再生記 03

以前ココで書いたのだが、色々な環境が変化しようとしている。
そんな中で『何やってんだ!』って感じだけど、そんな中だからやる事ってのもあるもんだ。

さて、長らく放置してあるTHORENSの発条(ゼンマイ)。
じつはコイツの発条は2段掛けなんだけど、そのうちの初段に不具合があり上手く発条が巻けない状態だった。(どうやらこの2段発条は、1段目が巻けないと2段目も巻けないようだ)

不具合と言うのは、発条の巻き取り部分のツメをホールドする穴と、発条後端の穴の破損である。この不具合は珍しくはないのだが、修理はちょっと厄介だ。発条の薄い板を溶接すればいいのだが、これがなかなか上手くいかない。薄すぎる金属は溶接しようとすると溶けるのだ。しかも、溶接個所はもろくなる。元々金属疲労によって切れた箇所だから、溶接できたとしてもすぐにまた破損する要素が満載だ。

また、溶接以外の修理方法としては、新たに穴を開けるという方法がある。但し、穴を開けるにはその部分にドリルビットが入らなければならない。つまりは、穴を開けたい面に対して垂直方向にドリルをあてがう空間が必要だ。残念ながら、発条の中央部にはそこまでの余裕はない。

では、どうするのか?
調べてみた所、本来は発条を一度焼きなまして平たく伸ばし、ドリルで穴を開けるなどの加工をしてから再び元の状態に戻すらしい。……うーん、ジブンには無理っぽいなぁ。

そこで、(随分前だが)知人のH氏に「これ、溶接できない?」と頼んでおいたのだ。
まぁ、H氏もこの部分の溶接が難しく、また仮にできたとしても品質が落ちることを懸念したのだが、ジブンとしては「壊してナンボ、つーか、既に壊れてる訳で……」と言う事だから、気にしないでやってみてと、半ば無理やり押し付けたのだった。

で、その発条が手元に戻ってきてから……数か月。
ようやく今のうちに少しはやっておこうかな?と思った次第だ。
(ながーい前振り、ご清聴ありがとうございました)

これが戻ってきた発条。
グルグルの真ん中の部分がNGなんですわ。

手前で溶接ビードが盛り上がってるのがわかる?その奥の穴の部分にツメがかかって発条を巻くのだけれど、この溶接した部分が切れていて巻き始めてもすぐにリリースされちゃう状態だった。

ビードがあのままだとツメが引っ掛からないから、ビードをリュータで削った。削り過ぎるとNGだろうし、削らなくてもNGだろうし、まぁ、今日の所はこんなもんで許してやろうかと。(笑)

「溶けそうだったら後ろの方で試していいよ」と言っていたので後端の穴付近で試したらしいのだが、弄ってたら溶接部がパキン!と割れてしまった。この穴は写真のように新たにあけたので全く問題ないのだが、(この後破損部分を切り取って整形した)この感じからすると、やはり中心部の溶接個所も巻き始めたら破損する可能性は高いようだ。

で、次の問題は……この左の発条を右のケースに入れる作業。ひたすら力技。しかも途中で失敗するとマジで危ない。なんたって、エナジーを蓄えた鋼が縦横無尽に飛び出したら……首筋とかに来たら、ホントアウトですからね。なるべくなら、マネしないように!

『幾多の苦難を乗り越えて、なんとか発条を押し込んだ』の図。でもまぁ、2段発条だから思ったより楽だったのは確か。但し、やはり危険には変わりない。
ちなみに、この作業を屋外でやっているのは、『びょーん!』となった時にすぐに投げ出して離れられるようにしているため。オフやトライアル車と一緒ですな。え?知らない?そんなあなたには、小説カゴメクライシスを熟読することをオススメします。(笑)

ケースに入った発条と巻き取り部の様子。どうも、上手く撮れなくて申し訳ないが、中央正面の白っぽいところが巻き取り部の穴。その穴の右下に、ちょっと山形に白く見える部分が溶接個所。

とりあえず今回はここまででタイムアップ!
さて、どうなることやら。
乞うご期待!

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