のみにけzakki帖 – ロボット

これから話すのは、私が何時だったか酒席で耳にした話だ。
まぁそんな状況での話だからその話の信憑性とか、時系列がおかしいとか、途中で登場人物の呼び方が変わってるとか、そんなことを気にしてはいけない。
なんなら貴方も、風呂上りのビールや、屋台の日本酒や、バーのスコッチでも飲みながら聞いてもらえるといいかもしれない、そんな些末な内容の話だ……。

 

その男と出会ったのは、仕事帰りに初めて寄ったカウンターバーだった。
男がカウンターの隣席で俯き加減になり、既にあらかた酩酊した空気を発していたのは承知の上だったが、まさか暫く後に話しかけられるとは思ってもいなかた。
確かあの時は、たまたま駅で買ってきたサイエンス雑誌のロボットに関する記事を見ていて……あぁなるほど、いまになって思い返すと納得が行く。
「あんた、ロボットすきなのかい?」
確か、それが最初の言葉だった。
「えぇ、まぁ。いつの時代もロボットと兵器は技術のリーダーだと思ってるんでね。好きなんですよ、そういう話」
そんな感じの受け答えをした私に、その男は口の端だけでシニカルな笑いをみせて、同時に方眉を上げた。
「俺はこれから独り言を言う。だけど隣に座ったあんたに迷惑になっちゃならねぇから、事前に聞きたいんだけどね……」
背を丸めて喋る男の言葉はぶっきらぼうだったけど不快感はなかった。
私はちょっとだけ考えたが酒の席では良くある事だし、趣向としては変わっていてなかなか興味深い。なによりここは前金制で出入が自由なカウンターバーなのだから、嫌になったら勝手に席を立てばいいだけの話だ。
「なんでしょうか?」
素直に聞き返すと、男は思った通りと言わんばかりにスツールに座る私の足先から頭までを舐めるように一瞥してから言った。
「ロボットの名前は、アルファとナナのどっちがいい?」
その言葉が意味するところを理解するまで数秒の時間を要したが、僕がナナでと答えると、男はゆっくり二回頷き、次いで「女の子の名前は何がいい?特別に決めさせてやる」と言った。
突然女の子の名前と言われても正直困ったものだ。思わずぐるりと見回した店内で、またまカレンダーが目に留まった
「カレンでどうですか?」
「ナナとカレンか、わるくない」
男は私の顔をマジマジと見てからスコッチを二つ頼んだ。
ひとつを私の前に出し、もうひとつを一気に煽ると再び俯いてボソボソと話はじめた。
「これは俺があるところで聞いた話だ、だから信憑性もないし曖昧な所も多々ある。だいいち、現代ではまだSF、つまりサイエンス・フィクションの範疇を越えない話でね、あくまでも俺の独り言なんだよ。そう、あるところにロボットがいてね……」

(つづく……かも)

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