永訣の朝

酷い天気だ。

まぁ、酷いのは時折降る大粒の霙と雨、

そしてずっと強く、しかもこの季節では滅多に吹かない方角から吹いている強風。

関東では大雪で電車が止まったとか?

今日は北日本が荒れるとか?

それに比べりゃ、雪も全く積もってないし

風が強くて外での作業(工作)が一切できないってだけで

充電日和という事も言える。

で、タイトル。

皆さんご存知、宮沢賢治の妹との最後の朝を謳ったもの。

霙で思い出した「あめゆじゅとてちてけんじゃ」という台詞は

確か高校の現国だったような気がするが、頭に残っている台詞。

さっき改めて永訣の朝を読んでみたけど

まぁ、子供には(少なくとも当時の自分には)わからんわな。

なんせ、妹「としこ」は肺結核の為24歳で(この朝)永眠。

賢治はそれよりも年上で、勿論今の同年代よりも(社会的には)

成熟していたであろうと思われるものを

16・7のガキんちょに「作者の心情を述べよ」なんて言ったってねぇ。

あ、でも、孔子や孟子の言葉なんて勉強しても無駄って言ってる

訳じゃない。

もちろん、考える事は重要で、そのプロセス(考える事、人を思う事、

生死感やその次のステップに向かう事を含む)を学ぶという意味では

無駄とは言わないけど、ある程度社会経験を積まないと

いや、平たく言うと、ある程度の年齢になってみないと

「理解する」ではなく「共感する」という事は無理なのでは? と思うんだけど……

まぁ、問題は共感できるか否かじゃなくて、理解して試験に対応できるか否か

だろうから、そういう意味では問題ないのかもね。

うぅ、いかんな。

なんか、現代のおざなりな大人の代表みたいになってきてるな。(w

では、最後に今一度。

 

永訣の朝

けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
うすあかくいっさう陰惨いんさんな雲から
みぞれはびちょびちょふってくる
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
青い蓴菜じゅんさいのもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀たうわん
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがったてっぽうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
蒼鉛さうえんいろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになって
わたくしをいっしゃうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまっすぐにすすんでいくから
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまってゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまっしろな二相系にさうけいをたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらっていかう
わたしたちがいっしょにそだってきたあひだ
みなれたちゃわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびゃうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまっしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
(うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになって
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ

宮沢賢治

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