自作サーベイメーター補正顛末記

先日AMiLOGでも書いた、日立アロカメディカル社製のTCS-172Bの続き。

その前に……
結局、本来2日間借りられるんだけど、既に予約がいっぱいで平日1日だけとなったため、かなり計測(に費やせる時間)が限定されてしまいました。もちろん目安として使う分には問題ないと思っています。

また、このTCS-172Bはガンマ線の計測を行うサーベイメータ―です。ジブンが作ったSBM-20という管を使用するガイガーカウンタでは、ガンマ線のみを計測する場合ガイガーミューラ管に遮蔽を行う必要がありますが、現状では行っていません。(ハコの問題とうまくセッティングする余裕が無かったというのが実情。さらに実情と言うなら、飯の種を稼ぐプライオリティが高くなっているという事もあり)故に、現状ではガンマ線とベータ線を拾う状態である(つまりは、単純に数値を校正するには条件が違いすぎる)という事も念頭に置いていただければ幸いです。

さて、それではまずTCS-172Bによる空間線量の測定から行います。

プローブはGL(この場合は床)から100cm(1M)の位置にプローブの中心が来るように三脚に固定(マスキングテープですので何処にも跡は残りません)。貸し出しの際に市が同封したマニュアルに従って、電源投入から30秒以上のアイドリングをし、2分間の計測を5回行ってその平均値を求めるという方法です。
また、この個体は校正係数が0.98であると記載されています。

では、室内(リビング)の計測結果です。
(2011年02月08日 新潟市西区某所 単位は全てμSv/hです)

■ 計測1
午前11:25 住宅(鉄骨)内リビング 気温10℃ 湿度43% 晴れ/曇り(降雨無)
計測機器は日立アロカメディカル社製のTCS-172B

1 : 0.07
2 : 0.08
3 : 0.07
4 : 0.06
5 : 0.07

平均 = 0.07
平均x校正係数 = 0.0686

TCS-172Bでのリビングの空間線量(イ)を 0.0686 μSv/hとする。

※ちなみに、計測地の数キロ圏内に新潟県が放射線を測定して毎時結果を公表しているセンターがあり、同時刻に発表しているデータが0.05μSv/hでしたので、(イ)をこの公表値相当とさせるには更に校正係数0.728を掛ける事となります。

 

■ 計測2
午前11:45 計測1と同地点 気温10℃ 湿度43% 晴れ/曇り(降雨無)
計測機器はSBM-20を使用するキット。同様にガイガーミューラ管がGLより100cmになるよう固定。
(電源は006P(9v)より安定化にて5.34~5.36vでドライブ)

1 : 0.1026
2 : 0.2052
3 : 0.1368
4 : 0.1710
5 : 0.1026
6 : 0.1026
7 : 0.2052
8 : 0.0684
9 : 0.1710
10 : 0.1368

平均 = 0.14022
キットでのリビングの空間線量(ロ)を 0.1402 μSv/hとする。

空間線量が(イ)より随分高く計測されていますが、これはベータ線遮蔽の問題等々あるので特に気にしていません。(大抵のキットはかなり高めの数値を出すようです)但し、この計測値でわかるようにかなりバラつきがある点は問題があります。これはキットの線量計算ソフトウエア部に問題がると思われます。
(イ)と違い10回計測したのはその為で、突出した誤差を少しでも和らげるためより多くのサンプルが必要と判断したためです。

さて、いろいろ問題はありますがこれも結果ですので(イ)を基準とした校正係数を算出すると……
校正係数 = 0.48923 となります。

 

■ 計測3

午後12:45 計測1と同地点 気温10℃ 湿度43% 晴れ/曇り(降雨無)
計測機器はSBM-20を使用する自作機(UTSUNOMIA式)1号機、何度もAMiLOGで登場するリビングの常時空間線量見張り番です。

同様にガイガーミューラ管がGLより100cmになるよう固定。
(電源は4.86v(非安定化)ドライブするには高いようですが、終段で絞ってるので問題ないと思います)

コイツはちょっと趣向を変えてUTSUNOMIA先生オススメの定確度計算という手法を取ってみました。
詳しくはUTSUNOMIA先生のサイトにすっごくわかり易く載っているのでそちらを参照願いたいのだが、要は、上記キットの算出方法が時間当たりの放射線量を計測(予測)するものであるのに対し、こちらは一定の放射線量を計測するに当たり要する時間から算出するものであります。

今回は100カウントに要する時間を5回計測するという方法で行いました。

1 : 324秒
2 : 385秒
3 : 328秒
4 : 342秒
5 : 348秒

ここでまたU先生のサイトからちょっと抜粋すると、基本的にこれらカウント(CPM)をμSv/hに換算するのはとても乱暴な事らしい(理屈は分かっていますが説明は面倒なので先生のサイトを参照ください)。但し、今回の検証ではμSv/hで比較検証をしているので、ちょっと乱暴だが先生も仰る100CPM=1μSv/hという式でこれを置換すると

1 : 0.1851
2 : 0.1558
3 : 0.1829
4 : 0.1754
5 : 0.1724

平均 = 0.17432

U式でのリビングの空間線量(ハ)を0.1743 μSv/hとする。

という事で、こちらも一応(イ)に対する校正係数を算出すると 0.3935 となります。

 

■ 計測4

ここで再び基準機のゆらぎを確認すべくTCS172で計測を行います。

午後1:06 住宅(鉄骨)内リビング 気温12℃ 湿度40% 晴れ/曇り(降雨無)
計測機器は日立アロカメディカル社製のTCS-172B

1 : 0.05
2 : 0.06
3 : 0.07
4 : 0.06
5 : 0.07

平均 = 0.062

平均x校正係数 = 0.0607
TCS-172Bでのリビングでの2回目の空間線量(ニ)を 0.0607 μSv/hとする。

ちなみにこの時間の県の公表値は0.048 μSv/h。
計測1で算出した校正計数を掛けると、0.0441 μSv/h。
おぉ!誤差の範囲で合ってるっぽいじゃん!(笑)と言う結果になりました。
(まぁ、空間線量が双方ともたいして動いていないので当然なんですけどね)

さて、これらの係数を出すことにより、今後自作機での空間線量実測値と発表値の差異がわかるようになります。また、今後(今まででも出来たんだけどね)公式に発表している数値との摺合せを行う事によって、より自作機の安定度や精度がわかるのではないかとも思っています。(但し、更に係数をかけて補正の必要がある為実際には参考程度となるはず。それよりもむしろ、平常時のカウントタイミングを何気なくヒューマンセンスにて計測していく方がいいとは思う)

さて、いきなりまとめみたいになったけど、まだ終わりじゃありません。
今度は屋外に出てみます。

リビングのすぐ横で倉庫の前です。この場所を選んだのは、この上にカーポートがかかっており比較的風も遮断され、今後測定の際多少天候が悪くても雨露をしのげる場所だという条件から選びました。

 

■ 計測5

午後1:20 簡易屋根付き・コンクリ敷屋外 微風 日陰 気温8℃ 湿度34% 晴れ/曇り(降雨無)
計測機器は日立アロカメディカル社製のTCS-172B

1 : 0.08
2 : 0.07
3 : 0.07
4 : 0.07
5 : 0.09

平均 = 0.076

平均x校正計数 = 0.0744
TCS-172Bでの空間線量(ホ)を 0.0744 μSv/hとする。

うん、思ったより中と外で差が無いなというのが実感。
ではじゃんじゃん、いきまっしょい!

 

■ 計測6

午後1:29 屋外 側溝上 微風 日向 気温16℃ 湿度20% 晴れ(降雨無)
計測機器は日立アロカメディカル社製のTCS-172B

今度は側溝の上です。真ん中チョイ左にある白い蓋が雨水の排水管ですので、降下した放射性物質が溜まるとしたらこの周辺の空間線量は高くなっていると思います。
ちなみに、この辺り(新潟・下越)では側溝の事をエンゾと言います。つまり、側溝に嵌ったフェラーリは、エンゾ・フェラーリな訳ですね。(どーでもいいですね)

1 : 0.08
2 : 0.08
3 : 0.07
4 : 0.08
5 : 0.07

平均 = 0.076

平均x校正係数 = 0.0744
TCS-172Bでの空間線量(ヘ)を 0.0744 μSv/hとする。

結果はガレージ内と一緒でした。そこで公式には記録していませんがプローブをグレーチングの上に置いてみました(グレーチングがことのほか強く嵌って外れなかったので)が、0.07~0.08と全く変化がありませんでした。

 

■ 計測7

午後1:43 屋外芝の上 微風 日向 気温18℃ 湿度18% 晴れ(降雨無)
計測機器は日立アロカメディカル社製のTCS-172B

屋外の芝の上です。じつは今年の降雪時にガイガーカウンタを持ち出して計測してみたんですが、室内とそれほど変わらない値を出していたのです。但し、今年は寒くて雪も多かったのであまり外に長居はしたくなくて早々に引き揚げました。
もちろんこの芝の上にも50cm以上の雪が積もっていました。そこで今回、もし雪に大量の放射性物質が含まれていたとしたら、ここに蓄積している筈だと思い調べてみました。結果はいかに?

1 : 0.08
2 : 0.07
3 : 0.06
4 : 0.07
5 : 0.07

平均 = 0.07

平均x校正係数 = 0.0686
TCS-172Bでの空間線量(ト)を 0.0686 μSv/hとする。

ふむ、ここでもほぼ安定していました。そこでこれも非公式ですが暫くプローブを芝の上にそっと置いてみましたが……まったく変化がありませんでした。そこでじつは家の周囲の犬走り(軒下の事です)を探ってみました。結果から言いますと、特に変化はありませんでした。地面から1cmの所で計測を行った際、一番高いところで0.09 μSv/h という値を出すところはありましたが、そこは以前畑に使った土を盛った経緯があり、肥料用のカリウムなどを含んでいる可能性が高い事から誤差の範囲としてもいいと思います。

 

■ 計測8

午後1:55 簡易屋根付き・コンクリ敷屋外 微風 日陰 気温5℃ 湿度32% 晴れ/曇り(降雨無)
計測機器はSBM-20を使用するキット。(電源は5.34v)

1 : 0.0684
2 : 0.1368
3 : 0.0684
4 : 0.0684
5 : 0.1368
6 : 0.0342
7 : 0.1710
8 : 0.1026
9 : 0.0342
10 : 0.0342

平均 = 0.0855

キットでの空間線量(チ)を 0.0855 μSv/hとする。

うーん、良くないなぁ。
ちなみに、計測2で算出した校正係数(0.48923)を掛けると0.0418 μSV/hとなります。
まぁ何が悪いって、やっぱり計算のタイミングですよね。じつは2分毎にカウンタを見たときに、2回ほど丁度リセットされて0と表示されていたことがありました。その場合は仕方ないので数秒(5~10秒)待って表示された値を書きとめましたが、これはちょっとバラつきがありすぎですね。
本来なら、もっとやってみたかった(やる必要がある)のですが、サーベイメータ返却の時間や平日の昼間でしたので当然仕事も溜まってましたので、これに関しては一旦この現状を認識するという事にして次の計測を行う事としました。

 

■ 計測9

最後の計測は近接放射線源に対してのTCS-172Bとキットの指示値比較です。
測定方法は線源に対して徐々に双方の測定部を近づけていくというもので、空間線量より高い値を出す距離より開始して最終的には直上までを計測するという方法を取りました。

但し、正直な所この時点でかなり仕事が押していまして、数値の計測時間も一回約2分(この前までは正確に2分としていた)また、双方の計測部との距離を同等に保つとはしたものの、慌てていてその距離をメモっていなかった事に後程気づいたという始末です。

しかも、キットの数値はかなり変動が激しく、2分間のうちで少しでも安定したところを感覚で捉えて記録するという事になりました。
まぁ、あくまで参考レベルという事になりますが、比較したものをご覧ください。

回数 : TCS-172B / キット / 算出校正係数
1 : 0.09 / 0.3762 / 0.23923444976
2 : 0.10 / 0.446 / 0.22421524663
3 : 0.13 / 0.5472 / 0.23757309941
4 : 0.14 / 0.6840 / 0.20467836257
5 : 0.12 / 0.3420 / 0.35087719298
6 : 0.16 / 1.2997 / 0.12310533199
7 : 0.17 / 1.1629 / 0.14618625849
8 : 0.17 / 0.8892 / 0.19118308591
9 : 0.20 / 1.1629 / 0.171198383351
10 : 0.53 / 3.8990 / 0.13593229033
11 : 0.44 / 3.28 / 0.13414634146
12 : 0.42 / 3.35 / 0.12537313432
13 : 0.43 / 3.89 / 0.11053954575
14 : 0.44 / 3.42 / 0.12865497076
15 : 0.43 / 3.55 / 0.12112676056

上記結果を(リ)とします。
さて、それではこの(リ)をちょっと整理しましょう。

まずは、TCS-172Bが計測した0.09~0.15までのグループA、0.16~0.20までのグループB、約0.4~約0.5までのグループCに分類します。

グループA
1 : 0.09 / 0.3762 / 0.23923444976
2 : 0.10 / 0.446 / 0.22421524663
3 : 0.13 / 0.5472 / 0.23757309941
4 : 0.14 / 0.6840 / 0.20467836257
5 : 0.12 / 0.3420 / 0.35087719298

グループB
6 : 0.16 / 1.2997 / 0.12310533199
7 : 0.17 / 1.1629 / 0.14618625849
8 : 0.17 / 0.8892 / 0.19118308591
9 : 0.20 / 1.1629 / 0.171198383351

グループC
10 : 0.53 / 3.8990 / 0.13593229033
11 : 0.44 / 3.28 / 0.13414634146
12 : 0.42 / 3.35 / 0.12537313432
13 : 0.43 / 3.89 / 0.11053954575
14 : 0.44 / 3.42 / 0.12865497076
15 : 0.43 / 3.55 / 0.12112676056

そして各表示値と校正係数の平均を出します。

(リ)グループA : 0.116 μSv/h表示時  0.25131567027

(リ)グループB : 0.175 μSv/h表示時  0.15791826493

(リ)グループC : 0.448 μSv/h表示時  0.12596217386

さて、それではここで計測2で算出した校正係数を思い出してみましょう、0.48923でしたね。前後の結果から、この係数はTCS-172Bが0.07 μSv/h表示時と考えて言いと思います。

そう考えると

0.070 μSv/h表示時 校正係数 0.48923
0.116 μSv/h表示時 校正係数 0.25131567027
0.175 μSv/h表示時  校正係数 0.15791826493
0.448 μSv/h表示時  校正係数 0.12596217386

と、ほら、なんとなく見えてきたような気がしませんか?
ここから先は平均変化率(微分)で出るような気がしますが、計算の仕方忘れちゃった。(爆)
尤も、まだまだサンプリングが足りないと思いますが……。

という事で、ちょっとこの記事も中途半端ですが、なにぶん仕事も詰まってまして、今日はココマデ。
また日を改めて検証の機会もあると思います。

※ご意見質問等はなんでもいつでもOKですよ。すぐに回答できるかどうかはわかりませんが、答えられる範囲でお答えいたします。

では、とりあえずここでドロンしまする。(笑)

[ratings] 『書く気』と『やる気』のエナジーを、是非!

日記・ブログ ランキングに参加しています
 面白いor共感できたら是非ともクリック願います

カテゴリー: ガイガーカウンタ・サーベイメータ, 技術・テクノロジー パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください