Victrola J1-50 近代化改修計画 その2

悠々自適? ンなアホな。
汲々自適ってトコですよ。(笑)

と言う訳で(何がや?)近代化改修その2です。

さて、前回の告知にあったように、このプロジェクトでは模型用のモータを使って古い蓄音機のターンテーブルを回す事を目指しています。うん、実際にこれがどういう事か? まぁそんなに難しいと思っていない方が多いと思うんですよね。
なにせ、乾電池で回す蓄音機は学研の大人の科学シリーズにも蝋管式と円盤式の二通りがあるので、それを鑑みると『まぁ、今回はAMiの手抜き回だな』なんて思っている方が多いのかな? と。(思ってるだけですが:笑)

だけどだけど、だけどですよ。じつは学研さんのヤツには秘密があるんですよ!
というのも、そもそも蝋管式と円盤式は回転半径が違います。恐らく学研さんの蝋管式の蝋管半径は、実際のSP盤の半分以下じゃないかと。
これ、なんとなく感覚でもわかりますよね? どちらがどれだけ多くの力が必要かって。

それから円盤式ですが、これは……恐らく針圧が低いんじゃないかと。学研さんの蓄音機でモータを使ってる回のモノは、確かSP盤(78回転)のほかにEP盤(45回転)も使えたはずなんです。
「なんだ、回転数落ちる分には問題ないじゃん」
って思うかもしれませんが、SP盤とEPでは盤面に置く針にかかっている重さが違うんですよ。SP盤に使われる針先にかかる重さはサウンドボックス等の重量もあって100~150g程、それに対してEP盤やLP版に使われる針先にかかる重さは1.5~2g前後と言われます。そう、50~100倍ですね。
なので、本物の蓄音機でEPやLPを聞くと確実にレコードが痛みます
(針や音溝の幅も違います。元々盤に使われる素材も違うんですよ)

学研さんがそんなモノを平気で世の中に出す筈がないと思えますので(持ってないので憶測ですが)恐らくバラストなんかでかなり針圧を抑えてあるものと思われます。
あとは使用する盤の大きさも『録音時(針圧をかける)にはCDを使う』と聞いたことがあり、これは先ほどの半径の相違という点からも必要とする力の設計がかなり低くなっていると思われます。

そして最後に、古い蓄音機のターンテーブルは滅茶苦茶重いんです。いや、古いに限らずターンテーブルって元来重いんですよ。
これはターンテーブル自身をフライホイルの代わりにしてワウ・フラッタを抑えるためだったり、共鳴を抑えるためだったりと……。

えーっと、何が言いたいのかというと

乾電池+模型用モータ駆動の蓄音機って、思ってるほど簡単じゃない!

(と、思うよ)という事なのです!

前振りが長くなりましたが(笑)今回のシステムに関して、自分なりに目標を立ててみたいと思います。

・電池はできるだけ汎用性が高いものを少なく。可能なら単三電池1本で
・モータも入手が容易で汎用性の高いものを
・稼働音(ノイズ)をできるだけ少なく
・使用に関して特殊な操作を必要としないように
・組み込み運用に際して外観の改造は極力少なく

とまぁ、こんな目標というか『縛り』を設定しました。
あはははは、結構ドM級ですね……。(笑)

さて、ではまずはモータの選定です。
模型用モータといえばやっぱりマブチ モーターでしょう。
という事でマブチモーター株式会社のWebサイトへ行って仕様諸元を見ながら今回は4種類のモータをピックアップしました。
(個人的表記ではモータとしていますが、マブチモーター(株)は社名がモーターなのでこの表記とします)

■ マブチモーター諸元表(メーカーWebより)

機  種 使用電圧範囲(v) 適正電圧(v) 適正負荷(mN・m) 無負荷時の回転数(rpm) 適正負荷時の回転数(rpm) 無負荷時消費電力(A) 最大消費電力(A)
FA130RA 1.5~3.0 1.5 0.59 9,100 6,990 0.66 2.2
RE140RA 1.5~3.0 1.5 0.66 8,100 6,150 0.66 2.1
RE260RA 1.5~3.0 1.5 0.98 6,300 5,040 0.64 2.56
RE280RA 1.5~3.0 3.0 1.98 9,200 7,700 0.87 4.7

この4つを選んだ理由は、模型用モータのデファクトスタンダードであると同時に、価格も150円~200円程とお手軽なためです。

という事で、今回はピックアップした中でミニマムのFA-130RAとマックスのRE-280RAを買ってきました。
上の写真はいわゆる130モータってヤツで、正式にはFA-130RA-2270といいます。通常はFA-130RAという型番で通りますが、末尾の2270って番号が標準品を示しているそうです。この形状で特殊な用途だったりするとこの末尾が変わるわけですね。
ちなみに、取付方法やモータからの出力はどうしようかな? と思い、一緒に置いてあったタミヤのプーリセットを買おうかどうしようか迷ったんですけど、モータベースとプーリが付属していました。(よく見りゃ箱に書いてありますね。280タイプにも入ってました)
しかし……130モータなんて単体で買ったの40年ぶりくらいだよ。(笑)

さて、ここでちょっとした事に気づきました。
メーカのWebサイトにある諸元と箱に書いてある諸元が違うんです。たとえば130だとWebでは無負荷時回転数は9,100(rpm)となっていますが、箱には8,600(rpm)と書いてあります。他にはトルク(適正負荷と表記されている)なんかも違いますし、これは130タイプだけでなく280タイプでも一緒でした。「なんで?」と暫く考えたのですが、聞いた方が早いと思いメーカにTelしました。

・回答(要約)
「Webでの数値は、当社製品のスペックを他メーカ様へ正確にお伝えするために安定化電源を使用した場合のモノを公開させていただいています。対して箱に書いてあるものは、一般的に購入されたお客様の利用方法として電源に乾電池を使用されると思いますので、乾電池使用時のドロップ(電圧降下)を見越した性能を表示しています」
との事でした。
なーるほど、そういう事かぁ。納得しました。
確かにまぁだいたいこのモータを使う人は、乾電池駆動だろうねぇと考えると、親切だと言えるでしょう。で、「それじゃ、このWebの表記に一定の係数をかけてるって事でいいんですかね?」と聞いたのですが「それは個々の性質を基にしてありますので……」との回答。うーん、まぁでもこの2個のデータがあれば、乾電池使用時のだいたいの実効値が出そうですね。
という事で、箱に書いてある乾電池使用時の諸元を書き出してみると共に、RE140とRE260の諸元についてもFA130の係数を基にちょっと校正してみました。

■ マブチモーター諸元表(乾電池使用時の校正諸元)

機  種 使用電圧範囲(v) 適正電圧(v) 適正負荷(mN・m) 無負荷時の回転数(rpm) 適正負荷時の回転数(rpm) 無負荷時消費電力(A) 最大消費電力(A)
FA130RA 1.5~3.0 1.5 0.39 8,600 6,500 0.50 2.2
RE140RA 1.5~3.0 1.5 0.43 7,654 5,718 0.50 2.1
RE260RA 1.5~3.0 1.5 0.64 5,953 4,686 0.48 2.56
RE280RA 1.5~3.0 3.0 1.47 8,700 7,700 0.60 4.7

(RE140・RE260タイプは手元にないのでFA130タイプの係数からの予測値)

さて、上記でわかるように負荷時の回転数は4,600rpm~7,700rpmであることがわかりましたが、SP盤の回転数は78rpmですので、そこまで落とすための減速比を算出しましょう。
これは各モータの回転数を78で割れば出てきますね。
※これ以下の計算では各モータの差を見ることを主眼としているため、伝達効率とか慣性モーメントとか摩擦係数はとりあえず棚上げしています。また、実際の運動は円運動ですが、計算は直線基準としています。

■ 78rpmへの減速比一覧

機  種 適正負荷回転数(rpm) 78回転時の減速比
FA130RA 6,500 83.333:1
RE140RA 5,718 73.307:1
RE260RA 4,686 60.076:1
RE280RA 7,700 98.717:1

それでは次に78回転へ減速時のトルク(適正負荷)を見てみましょう。
各モータのトルクに減速比を掛けます。

■ 78rpm減速時のトルク一覧

機  種 適正負荷(mN・m ) 減速比 78回転時のトルク(mN・m )
FA130RA 0.39  83.333:1  32.499
RE140RA 0.43  73.307:1  31.522
RE260RA 0.64  60.076:1  38.448
RE280RA 1.47  98.717:1  145.113

上記の結果から78回転時のトルクがわかりました。但しこれは単位からもわかるように中心点から半径1cmでのトルクとなりますので、実際のSP盤の盤面最大半径である約15cmの最外周でのトルクに置き換えてみましょう。これは単純に78回転時のトルクを15で割ります。
また、同時に98.0665 mN·m=1 センチメートル重量キログラム(cm kgf) として、15cm盤面端部でどのくらいの重量をかけられるのか見てみましょう。

■ 78回転時、半径15cmのターンテーブルにかけられる重量

機  種 78回転時のトルク(mN・m ) 盤面端部でのトルク 端部許容荷重(g)
FA130RA  32.499 2.165  21.942
RE140RA  31.522 2.101  21.424
RE260RA  38.448 2.563  26.199
RE280RA  145.113 9.674  98.647

RE280RAでも端部許容荷重98gかぁ。実際の蓄音機の針圧が100~150g位だしなぁ、但し、摩擦係数は……どんなもんなんだろ? しかもRA280のデータって3vなんだよね。これだと電池一本じゃなくて2本になっちまうなぁ。

本当に動くのか?

という懐疑心と共に、おいら何か計算間違ってますかね? という疑心暗鬼に……。
なにせ思いつきでざざっとやってますんで。

で、じつはここで実際にモーターを回して指で押さえたりしと色々弄り回してみたんだけど

動きそうな気がするのよねん。

えー、じゃぁこの計算というか、考え方が根本的に間違ってるのかなぁ? と思って再度色々な資料を見てたら……

あ、最大負荷じゃねぇじゃん! と。

これはあくまで適正負荷であって、つまりは回転が安定した時の適正値ってわけですな。
なら……

MAXはどーなのよ?

と調べたら、ちゃんとメーカーのWebにも載ってました。
まぁこれも理論値ですけどそれを基に上記の端部許容荷重を計算したものが下記となります。

■ 78回転時、半径15cmのターンテーブルにかけられる重量(論理最大値)

機  種 適正負荷(mN・m ) 適正負荷時端部許容荷重(g) 最大負荷(mN・m ) 最大負荷時端部許容荷重(g)
FA130RA 0.39 21.942 2.55 143.381
RE140RA 0.43 21.424 2.74 136.515
RE260RA 0.64 26.199 4.90 200.586
RE280RA 1.47 98.647 12.7 852.256

おお! なんかイケそうじゃないですか?
RE280RAに関しては電圧3vの所1.5vにしたらどの位の効率で稼働するのかわかりませんが、半分としても430gほどでRE260の倍以上ですね。(実際には二次曲線的に変化するだろうからわかりませんが)

まぁ勿論これは理論値の最大値で、運動効率や各所の摩擦係数や慣性モーメントによる損失なんかは含んでいませんのでこの通りになるなんて全然思っていません。おまけに自分自身、コンな理詰めの計算値に近づける事に情熱を傾けるタイプじゃないですし。

では、何のためにこんなことをやったのかというと、上記のモータから何を選んだらいいのかいな? という事を知りたかったのです。
まぁ、それ以前にミニマムの130タイプとマックスの280タイプを買ってきた時点で「この二つのうちのどちらかかな?」とは思っていたのですけどね。(笑)

今後の展開

恐らく上記を見ると130タイプでも大丈夫な気はします。『より小さいモータで動かした方がカッコイイ気がする』という私的に排除できない重要なファクタを考えると130タイプ一択なのですが、今回用意したFA130とRA280の二つのモータを実際に動かしてみて気づいたことがありました。それは……ノイズの問題です。
勿論モータの稼働音が気になるだろう事は頭にありましたが、思っていた以上に130タイプの稼働音が高くて大きかったのです。まぁ回転数を考えれば当然なんですけどね。実際にかなり余裕を持たせて稼働できれば問題ないと思うのですけど、なかなかそうも行かない気がしますし、消音を考えると熱的に微妙な気もしますし、それなら今回はRE280RAかな? と思っています。

ということで、

モータはマブチRE-280RA-2865を使用します。

とりあえず今回はここまで!

 

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カテゴリー: 蓄音機・Gramophone, 音楽・楽器 パーマリンク

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