YAMAHA FZ250レストア記 #03 眠り姫の胃袋を……編 錆穴だらけのガソリンタンク再生1

さてさて、FZ250レストア記も3回目となりました。
実際にはソコソコ進んではいますが、天気の良い日は作業となりますので報告が遅れております。
ちなみに今日は、朝から雨です。(笑)

それでは、行ってみましょうか!

今回は姫の胃袋蘇生を行ってみます。

まぁ、錆だらけのタンクに【花咲G】なんか入れて錆を取るだけなんてのはどこでもやっていますし、タンクがボロなので切開して補修なんてのも兎(ラビット再生クライシス)回でやっているので、今回はもう少しためになるネタを提供できればと思っています。

さて、では少しおさらいです。

上の画像のようにFZ250はダミータンク式となっていて、本来タンクっぽく見えているカウル内部がエアクリーナになっていて、その後ろに山型のようなタテ型のスチール製ガソリンタンクが内蔵されています。

※写真では丁度タンクキャップが見えていますが、あそこを山の頂上にしてその下に少し広がるような感じになっています。

まずは、タンクの内部を見たいのでこのタンクキャップを外したいのですが、生憎最初から鍵なし車両なので、まずはこのキーシリンダーを壊すところから始めました。

こんな感じですね。
キーシリンダーはアウタースリーブに傷をつけない程度にドリルなんかで揉んでやるといいです。ちなみに今回はヤフオクにてFZR250(レーサーレプリカタイプ)のキーシリンダーセットを入手していましたので、心置きなく壊しました。(笑)

で、本体ならその使用する方のシリンダーから鍵の駒を抜いたものなどをこの穴に突っ込んで(当然清掃してからですよ)回すと鍵がグリンとまわってタンクキャップが外れるんですが、これがなんとも、回る気配がない!

仕方ないので、上の穴にラスペネ(CRC-556の濃い版みたいなの)を充填して3日ほど放置してみたのですが……

一向に回る気配がありません。

さて、そんな時AMiWKSではどうするか?
なんとなく、流れが見えてきましたね。(笑)

 

「これより眠り姫の胃の全摘及び患部除去オペを開始します!」

 

という事で

切りました。

さて、本来ガソリンタンクを切るには

・ガソリンが入っていない事
・ガソリンを抜いてあり、かつ水などを十分満たしてガソリンが揮発状態でない事
・切削時に火花などで引火・誘爆が起こらないようにすること

などの条件が揃わないといけないんですが、今回はタンクをゆすったり叩いたりしてみたんですがどうも中に液体が入っている気配が無かったので、誘爆に気を付けながらも金鋸で切りました。

まずは……

すいません、いきなりグロで……

蜜蝋とかじゃないですよ、これが回らないガソリンキャップの裏側です。

上の蜜蝋キャップにドライバーを差し込むと、粘土状の物質がぼろぼろと……。
これは恐らく揮発したガソリンの油分と水が長い年月をかけて一番上のタンクキャップ部で固まったものと思われます。

更に発掘していくと漸くキャップの裏側が見えてきました。丁度左右に小さな爪(でっぱり)が見えますが、本来なら鍵を回すとこの爪が引っ込んでキャップが外れるという構造です。

もちろん、この状態で直接ツメを押しましたが、ウンともスンとも言いません。(そんな音や声が出てきたらそれはそれで怖いんだけどね)
なので、一か八か上下に見えるネジ穴を発掘し、貫通ドライバでインパクトを与えつつグニィィィィィィィ……とやったら

なんとかタンクキャップを外すことに成功しました。
うん、まずは食道の患部除去成功って感じですかね。

さて、このあとはタンク本体になるんですが、その前にちょっと考察を。

これはタンク直下のトランスミッション上部付近です。真ん中あたり、セルモーターの右側が黒光りしているのがわかりますかね? これは放置ガソリンのタール状物質なんですね。

最初、タンクを切る前に中の状態を予測するためにゆすったり叩いたりしたと書きました。前オーナーさんがどのような方でどのように保存されていたかは謎だったのですが、恐らく満タン状態だったのではないかと推測していました。というのも、タンクの横から腐食によってガソリンが流れ出した跡があったこと、この下部にたまったタールもそうです。なにより、恐らくカバーをかけて長期保管に備えたと思えるオーナーさんが、中途半端な量のガソリンを入れて置いておくことはないんじゃないかという推測もありました。(状態から結構大切に仕舞ってあったのかな? と。)なので、タンクをゆすっても叩いても全く液体の音がしなかった事には少しだけ違和感を覚えていたのです。

で、実際に切開したタンクを見てみると……

これ、切開した直後に上部からタンクの内部を見たものです。

美味しそうな茶色いココアの塊は……えぇ、タンクです。タンクそのものです。(爆)
まさに姫の胃壁ともいうべき、タンクの鉄部分が錆となって崩落しているものです。タンクの横を叩いたショックで崩落したんでしょう。手前の部分なんかにはまだ残っていたので、木の棒でつついたら面白いくらいポロポロと剥がれ落ちます。いや、ほんと面白いくらい……タンクが薄くなっていきます。(涙)

まぁね、この状態はラビットなんかをやってると「あー」位にしか思わないんですけどね、でも今回はそのラビットをはじめとする旧車を扱ってきたジブンが今まで見たことのなかったものを見ることができました。

さて、前回(レストア記 #02)の最後に言ってた『ガソリンの変遷』を思い出してください。

通常ガソリンって放置すると腐りますよね?
キャブなんかに溜まっているガソリンがわかりやすいのですが

第一段階:腐ったタクアンみたいな臭いを発する
第二段階:緑色のコケのようなものが生える(微生物という噂もあり!?)
第三段階:黒いタールのようになる

二つ前の写真のセルモーターの横で黒光りしているのが第三段階のタール状物質になった状態です。

では、さらに放置するとどうなるのか?
第四段階ってあるのか?
じつはヒントは既に皆さんの目の前にあります。
それは30年近く放置されたと思われるガソリンタンクです。
上の写真の真ん中は茶色ですけど、下部両脇は黒いですよね?
何を隠そうこれが第四段階です。完全な固形物となっています。

この状態は初めてだったんですけど、固形物なのでちょっとハンマーで叩いたりすると割れます。そして、茶色の錆と割れた固形物の塊が邪魔になったのでとりあえずタンクから輩出してみました。

おぉ! なんか思ったより綺麗なタンクになりました。 上の茶色の部分は錆びて表皮と一緒にはがれた部分です。その少し下、シルバーっぽいところが、先ほどの固形化した第四段階のガソリンが張り付いていた場所です。
底は思ったより綺麗ですね。黒光りして錆も少なく平坦で……平坦で……アレ?

「ガソリンコックの穴がないぞ」
そう、最初はそこに気づいたんですよ。いや、正確には真ん中下にちょっと穴がありますが、ここにコックから伸びているガソリン取り出し口のノズルがついていたんですけど、使え無さそうだったので引きちぎりました。
まぁそこまでは良いです。
問題は、ガソリンコックを止めているネジ穴やリザーブ用の取り出し口がないんです。

しかも、左に写っているシルバーの棒はM10の全ネジなんですが、なんか変なんです。何がと言われるとわからないんですけど、そこはかとない底上げ感が……(笑)

なので、とりあえず思いっきりこの黒い底部をこの全ネジでガシガシ突いてみました。

『バキッ!』

わかりますかね? 突いたあと、上の写真を左に90度回したものです。
真ん中の茶色い部分がばきっという音と共に割れて顔をのぞかせた本当のタンク底部です。つまり、本当にタンクが上げ底状態になっていたんですね。

で、この上げ底状態だったものは何かというと……

コレです。
恐らく前のオーナーさんはガソリンを満タンにして保管したんでしょう。(タンク中央上部に漏れた跡があるのでそれ以上入っていたという事)そして、30年放置されるとガソリンは、那智黒に……いや、コークスでもないし、タールでもないし、なんか綺麗な茶色の固形物になるんですね。第四形態、初めて見ました。

ちなみに、ひたすらガシガシ突いているとこちらも結構面白いように割れていきます。なんだろうなぁ、硬さ的にはやはり飴っぽいですね。あぁ、コーラ飴だ!(笑)

ちょっとやったらこんな感じに……

まるで何かの採掘現場ですね。
でもね、最終的にこのタンクから出てきたのは……

これ、8Lのバケツです。腫瘍全摘……どんだけ出るんだよって感じですね。
もちろんコックも『発掘レベル』でした。(笑)

さてさて、ここまで来たらつぎはいよいよ再生に向けてのアプローチですが……
え? 尺がない?
なるほど、では仕方ない。
今回はこんな感じで、お楽しみは次回に……って、
姫の胃は本当に再生できるんでしょうかね?

 

「私、失敗しませんから!」

 

あぁ、女医ナーの声が何処からか聞こえるような、聞こえないような(閣下風に)
という事で、次回までメロンを片手に待つべし!

 

 

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